log
ギリシャ語 Greek言葉、理性;〜学
この語根について
語根 log は、ギリシャ語の中でも特に意味の豊かな単語 logos(λόγος)から来ています。ギリシャ人にとって logos は、ひとつの意味に収まる言葉ではありませんでした。口にする言葉、人前で行う演説、筋道立てて述べる説明、そして何より大切なのが、物事の背後にある理性や道理です。logos で語るとは、考えを整った言葉にすることでした。このように「言葉」と「理性」という二つの顔をもつため、log はまったく性格の違う二つの英単語グループを生み出しています。
グループ1:話すこと、話される言葉。 こちらでは logos は素直に「言葉」「話」という意味を保ち、ギリシャ語の接頭辞がその話の形を教えてくれます。
- dia-(横切って、〜の間で)+ logos → dialogue:二者の間を行き交う言葉、つまり対話です。
- mono-(ひとつ)+ logos → monologue:一人が長く話し続ける独白です。
- pro-(前に)+ logos → prologue:本編が始まる前に語られる言葉、序章です。
- epi-(上に、後に)+ logos → epilogue:物語が終わった後に添えられる言葉、結びです。
- ana-(〜に従って、比例して)+ logos → analogy:二つのものが同じ比率の関係にあると考える推論で、「A と B の関係は、C と D の関係に等しい」という形をとります。
- apo-(離れて、元へ)+ logos → apology:もともとは自分を弁護するための演説で、告発に対して言葉で身を守ることでした。(この古い意味は an apology for one's beliefs「自らの信念の弁明」という言い方に残っています。)
- eu-(よい)+ logos → eulogy:ある人、特に亡くなった人について語るよい言葉、つまり賛辞・追悼の辞です。
- neo-(新しい)+ logos → neologism:新しく作られた言葉、新語です。
グループ2:〜の学問(接尾辞 -logy)。 こちらが logos のもう一つの、より有名な顔です。「筋道立てた説明」から「体系的な研究」、つまり「〜学」という意味になりました。ある分野を表す要素に -logy を付けるだけで、学問の名前ができあがります。この型はほとんど機械的で、X + logos = X の学問、X + logist = X を研究する人、X + logical = その学問に関する となります。
- bio-(生命)→ biology(生物学)、biologist、biological
- psych-(心)→ psychology、psychologist、psychological
- eco-(家、環境)→ ecology、ecologist、ecological
- theo-(神)→ theology、theological
- gen-(誕生、血筋)→ genealogy(家系をたどる説明、系譜学)
- astro-(星)→ astrology → astrological
- arch(aeo)-(古代の)→ archaeology → archaeological
- chrono-(時)→ chronology → chronological
- anthropo-(人間)→ anthropologist
- path-(苦しみ、病気)→ pathology → pathological
この型が見えてくると、難しそうな学術用語の多くが自然に読み解けるようになります。meteorology は「空中のもの」の学問(気象学)、cardiology は心臓の学問(心臓病学)、dermatology は皮膚の学問(皮膚科学)、herpetology は爬虫類の学問(爬虫類学)です。丸暗記するのではなく、読んで意味がわかるのです。
よく似た別物に注意。 英語の log がすべて logos から来ているわけではありません。ふつうの英単語 log(切った丸太。そこから船の logbook「航海日誌」、さらに一般の「記録」の意味に)はゲルマン語系で、ギリシャ語の「言葉」とは無関係です。logistics(物資の補給・輸送、ロジスティクス)はフランス語の loger「宿営させる、兵を泊める」から来ていて、これも別系統です。また rhapsody の語尾は -logy ではなく -ody(ōidē「歌」)です。見た目は同じ一族のようでも、よそから入ってきた言葉なのです。
ひとつの語根に二つの顔があります。log が話すことを表すときは、二人の間を言葉が行き交う dia-LOGUE(ダイアローグ)を思い浮かべましょう。接尾辞 -logy のときは、そのまま「〜学」と読めば大丈夫です。bio-logy は生命の学問、eco-logy は住まい・環境の学問。X + logy は X の学問、X + logist はそれを研究する人です。
代表的な単語を詳しく
同じ語根を持つ単語の中から、特に語る価値のある数語を選び、その成り立ちを一つずつひもときます。
logiclogos の「理性」という意味をもっとも純粋に残している単語です。ギリシャ語の logikē (technē) は「logos に関わる(技術)」、つまり筋道立った思考を扱う技術という意味でした。ですから logic は、文字どおり「理屈についての学」です。現代の意味はそこから広がり、学問分野としての「論理学」(study logic)、話の一貫性としての「論理」(the logic of his argument)、さらにはソフトウェアの「ビジネスロジック」、つまりプログラムに組み込まれた判断のルールまで表すようになりました。
logos の「理性」という意味をもっとも純粋に残している単語です。ギリシャ語の logikē (technē) は「logos に関わる(技術)」、つまり筋道立った思考を扱う技術という意味でした。ですから logic は、文字どおり「理屈についての学」です。現代の意味はそこから広がり、学問分野としての「論理学」(study logic)、話の一貫性としての「論理」(the logic of his argument)、さらにはソフトウェアの「ビジネスロジック」、つまりプログラムに組み込まれた判断のルールまで表すようになりました。
logic を見るdialogueよくある誤解は、dia- を「二つ」と考えて、dialogue を「二人の会話」だと思ってしまうことです。「二つ」を表すのは別の接頭辞 di- です。ここでの dia- は「横切って、〜の間で」という意味で、dialogue は立場の違う者どうしの間を言葉が行き来することを指します。ですから参加者が三人以上でも dialogue と言えますし、dialogue between nations(国家間の対話)という表現も成り立つのです。これに対して monologue の mono-(ひとつ)は、本当に話し手が一人であることを表します。
よくある誤解は、dia- を「二つ」と考えて、dialogue を「二人の会話」だと思ってしまうことです。「二つ」を表すのは別の接頭辞 di- です。ここでの dia- は「横切って、〜の間で」という意味で、dialogue は立場の違う者どうしの間を言葉が行き来することを指します。ですから参加者が三人以上でも dialogue と言えますし、dialogue between nations(国家間の対話)という表現も成り立つのです。これに対して monologue の mono-(ひとつ)は、本当に話し手が一人であることを表します。
dialogue を見るanalogy実は数学の考え方が隠れている単語です。ana-(〜に従って、比例して)+ logos(ここでは「比、比率」)で「比率が一致すること」。ギリシャ人は analogia を比例、つまり A:B = C:D の関係に使いました。analogy は、見た目の違う二つのものが同じ関係を共有していると主張します。たとえば「CPU とコンピューターの関係は、脳と体の関係と同じだ」というように。つまり analogy は単なる比較ではなく、構造が平行していることを言う言葉なのです。
実は数学の考え方が隠れている単語です。ana-(〜に従って、比例して)+ logos(ここでは「比、比率」)で「比率が一致すること」。ギリシャ人は analogia を比例、つまり A:B = C:D の関係に使いました。analogy は、見た目の違う二つのものが同じ関係を共有していると主張します。たとえば「CPU とコンピューターの関係は、脳と体の関係と同じだ」というように。つまり analogy は単なる比較ではなく、構造が平行していることを言う言葉なのです。
analogy を見るapology語源から意味が大きく離れた単語です。apo-(元へ、離れて)+ logos(言葉)で「自分を弁護する演説」、つまり告発に対して言葉で身の潔白を示すことでした。プラトンの『ソクラテスの弁明』(Apology)は、ソクラテスが自分を弁護する話で、謝罪しているわけではありません。時代とともに、法廷での弁明が日常の「ごめんなさい」へとやわらいでいきました。もとの意味は、今でも an apology for capitalism(資本主義の擁護論=筋道立てた弁護)のような言い方に生きています。
語源から意味が大きく離れた単語です。apo-(元へ、離れて)+ logos(言葉)で「自分を弁護する演説」、つまり告発に対して言葉で身の潔白を示すことでした。プラトンの『ソクラテスの弁明』(Apology)は、ソクラテスが自分を弁護する話で、謝罪しているわけではありません。時代とともに、法廷での弁明が日常の「ごめんなさい」へとやわらいでいきました。もとの意味は、今でも an apology for capitalism(資本主義の擁護論=筋道立てた弁護)のような言い方に生きています。
apology を見るeulogyeu-(よい)+ logos(言葉)で「よい言葉」。eulogy は、ある人をたたえるスピーチのことで、古くから葬儀で故人について語る「よい言葉」、つまり弔辞を指してきました。動詞の eulogize は、そうした賛辞を述べる・ほめたたえるという意味です(名詞ではなく動詞である点に注意しましょう)。
eu-(よい)+ logos(言葉)で「よい言葉」。eulogy は、ある人をたたえるスピーチのことで、古くから葬儀で故人について語る「よい言葉」、つまり弔辞を指してきました。動詞の eulogize は、そうした賛辞を述べる・ほめたたえるという意味です(名詞ではなく動詞である点に注意しましょう)。
eulogy を見る関連する語根
どちらも「話す・音」に関わりますが、log(logos)は意味のある言葉や理屈を表し(dialogue、logic)、phon(ギリシャ語 phōnē)は声や音そのものを表します(telephone、phonetics)。意味と理屈なら log、音の響きなら phon です。
どちらも学問分野や表現の形を表しますが、log は話される言葉・筋道立てた研究(-logy=〜学)、graph は書かれたもの・描かれた記録(-graphy=〜を書き記すこと)です。geo-logy は地球を研究する地質学、geo-graphy は地球を書き記し地図にする地理学。研究なら -logy、記述なら -graphy です。
どちらも話すことに関わります。dict(ラテン語 dicere「言う」)は、口に出して言う・宣言するという行為に重点があります(dictate、predict、verdict)。log は、意味や理屈をもった言葉そのものに重点があります(dialogue、logic)。声に出して言うなら dict、筋道立った言葉なら log です。
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