医療英語の語根・接頭辞・接尾辞|24の語源で医学用語を読み解く

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Wordiyo · 2026-07-25 · 12分

electroencephalogram、cholecystectomy……。医療英語と聞くと、こんな長くて見慣れない単語を思い浮かべて身構えてしまう人も多いでしょう。ところが実は、医療用語は英語の中でいちばん「規則正しい」語彙です。日常語のように成り行きで生まれたのではなく、ギリシャ語とラテン語の限られたパーツを、レゴブロックのように組み合わせて作られているからです。パーツさえ知っていれば、用語のほうから勝手にほどけていきます。

語源を知っている医学生が、何千もの用語を一つずつ丸暗記しないのはそのためです。覚えるのは数十の語根と、ひと握りの接頭辞・接尾辞だけ。あとはそれを組み合わせればいい。この記事では、医療英語を読むうえで「元がとれる」度合いがとくに高い24個を、何を表すかごとにグループ分けして紹介します。

じつは日本語の医学用語も、同じ発想でできています。「腎」+「炎」で腎炎、「胃」+「炎」で胃炎。英語の nephritis や gastritis も、パーツの並べ方が違うだけで、やっていることは同じです。漢字で医学用語を読める人なら、英語の医療用語もきっと読めるようになります。

医療用語の組み立て方

ほとんどの医療用語は、同じ3段構造の設計図に沿っています。接頭辞(量・位置・タイミングなどを表すことが多い)、語根(体の部位や器官系の名前)、接尾辞(病気・処置・学問分野の名前)の3つです。すべての用語に3つがそろっているわけではありませんが、このパターンが見えてしまえば、長い単語も読めるかたまりに分かれてくれます。

まずは cardiology から。cardi(心臓)+ -ology(〜学)で、文字どおり「心臓の学問」、つまり心臓を扱う医学の分野(循環器内科/心臓病学)です。「-ology」はいつでもこの仕組みで、neurology は神経の学問(神経内科/神経学)、dermatology は皮膚の学問(皮膚科学)になります。

次は3パーツそろった例、hypertension。hyper(過度に)+ tens(ラテン語 tendere「引っぱる、張りつめさせる」。ここでは「圧力」)+ -ion(状態)で、「圧が過度にかかった状態」。まさに高血圧そのものです。接頭辞を hypo(下に、不足して)に取り替えれば hypotension、低血圧になります。

体の部位・器官を表す語根

ここに並ぶ語根は、体のどこの話なのかを示します。多くの用語の「錨」になる部分で、後ろに接尾辞をつければ病気や処置に、前に接頭辞をつければ程度や位置の情報が加わります。

cardi — 心臓

  • cardiology(cardi + -ology)— 心臓の学問 → 循環器内科/心臓病学
  • cardiac(cardi + -ac)— 心臓の
  • tachycardia(tachy + cardi)— 心拍が異常に速いこと → 頻脈
  • myocardium(myo + cardi)— 心臓の筋肉 → 心筋

derm / dermat — 皮膚

  • dermatology(dermat + -ology)— 皮膚の学問 → 皮膚科学
  • dermatitis(dermat + -itis)— 皮膚の炎症 → 皮膚炎
  • epidermis(epi + derm)— 皮膚の「上」にある外側の層 → 表皮
  • hypodermic(hypo + derm)— 皮膚の下の(注射について言う)→ 皮下の

hepat — 肝臓

  • hepatitis(hepat + -itis)— 肝臓の炎症 → 肝炎
  • hepatic(hepat + -ic)— 肝臓の
  • hepatomegaly(hepat + megaly)— 肝臓が大きくなること → 肝腫大
  • hepatology(hepat + -ology)— 肝臓の学問 → 肝臓病学

nephr — 腎臓

  • nephritis(nephr + -itis)— 腎臓の炎症 → 腎炎
  • nephrology(nephr + -ology)— 腎臓の学問 → 腎臓内科/腎臓病学
  • nephron(nephr + -on)— 腎臓で血液をろ過する機能単位 → ネフロン(腎単位)
  • nephrectomy(nephr + -ectomy)— 腎臓を手術で取り除くこと → 腎摘出術

neur — 神経

  • neurology(neur + -ology)— 神経系の学問 → 神経内科/神経学
  • neuron(neur + -on)— 神経の細胞 → ニューロン(神経細胞)
  • neuralgia(neur + -algia)— 神経の痛み → 神経痛
  • neurosurgery(neur + surgery)— 神経系の手術 → 脳神経外科

oste — 骨

  • osteoporosis(oste + poros)— 組織がすかすかになり、もろくなった骨 → 骨粗鬆症
  • osteoarthritis(oste + arthr + -itis)— 骨の変性をともなう関節の炎症 → 変形性関節症
  • osteotomy(oste + -otomy)— 骨を手術で切ること → 骨切り術
  • osteomyelitis(oste + myel + -itis)— 骨と骨髄の炎症 → 骨髄炎

gastr — 胃

  • gastritis(gastr + -itis)— 胃の粘膜の炎症 → 胃炎
  • gastric(gastr + -ic)— 胃の
  • gastroenterology(gastr + enter + -ology)— 胃と腸の学問 → 消化器内科/消化器病学
  • gastroscopy(gastr + -scopy)— 胃の中を目で見て調べること → 胃内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)

pneum / pulmon — 肺、息

  • pneumonia(pneumon + -ia)— 肺の感染と炎症 → 肺炎
  • pneumonectomy(pneumon + -ectomy)— 肺を手術で取り除くこと → 肺切除術
  • pulmonary(pulmon + -ary)— 肺の
  • cardiopulmonary(cardi + pulmon)— 心臓と肺の両方に関わる → 心肺の

hemat / hem — 血液

  • hematology(hemat + -ology)— 血液の学問 → 血液学
  • hematoma(hemat + -oma)— 固まった血液がたまったかたまり → 血腫
  • hemorrhage(hem + rrhage)— 血液が勢いよくあふれ出ること → 出血
  • anemia(an + -emia)— 血液・赤血球が足りない状態 → 貧血

encephal — 脳

  • encephalitis(encephal + -itis)— 脳の炎症 → 脳炎
  • encephalopathy(encephal + -pathy)— 脳の病気全般 → 脳症
  • electroencephalogram(electro + encephal + -gram)— 脳の電気活動の記録 → 脳波図(脳波、EEG)
  • anencephaly(an + encephal)— 生まれつき脳の主要な構造がないこと → 無脳症

病気・処置を表す語根と接尾辞

こちらは「何が起きているのか」を教えてくれるグループです。炎症なのか、痛みなのか、病気なのか、それとも手術なのか。体の部位を表す語根の後ろにつなげれば、診断名や処置の名前ができあがります。

-itis — 炎症

日本語の「〜炎」にあたる、いちばん出番の多い接尾辞です。

  • arthritis(arthr + -itis)— 関節の炎症 → 関節炎
  • appendicitis(appendic + -itis)— 虫垂の炎症 → 虫垂炎(いわゆる盲腸)
  • bronchitis(bronch + -itis)— 気管支の炎症 → 気管支炎
  • tonsillitis(tonsill + -itis)— 扁桃の炎症 → 扁桃炎

-ology — 〜学

  • cardiology(cardi + -ology)— 心臓の学問 → 循環器内科/心臓病学
  • radiology(radi + -ology)— 放射線を使った画像診断の学問 → 放射線医学
  • oncology(onco + -ology)— 腫瘍とがんの学問 → 腫瘍学
  • pathology(path + -ology)— 病気の学問 → 病理学

-ectomy — 切除術

「〜切除術」「〜摘出術」の決まり文句です。

  • appendectomy(append + -ectomy)— 虫垂を手術で取り除くこと → 虫垂切除術
  • tonsillectomy(tonsill + -ectomy)— 扁桃を手術で取り除くこと → 扁桃摘出術
  • mastectomy(mast + -ectomy)— 乳房を手術で取り除くこと → 乳房切除術
  • hysterectomy(hyster + -ectomy)— 子宮を手術で取り除くこと → 子宮摘出術

-otomy / -tomy — 切開

-ectomy が「取り除く」なら、こちらは「切って開ける」。似ていますが意味は別物です。

  • tracheotomy(trache + -otomy)— 気管を手術で切開すること → 気管切開術
  • laparotomy(lapar + -otomy)— 腹部を手術で切開すること → 開腹術
  • craniotomy(crani + -otomy)— 頭蓋骨を手術で開くこと → 開頭術
  • phlebotomy(phleb + -otomy)— 静脈を切って血液を抜くこと → 瀉血/採血

-pathy — 病気

  • neuropathy(neur + -pathy)— 神経の病気 → ニューロパチー(神経障害)
  • cardiomyopathy(cardi + myo + -pathy)— 心臓の筋肉の病気 → 心筋症
  • retinopathy(retin + -pathy)— 網膜の病気 → 網膜症
  • osteopathy(oste + -pathy)— 骨の病気/それに関連する治療体系 → 骨疾患/オステオパシー

-algia — 痛み

  • neuralgia(neur + -algia)— 神経の痛み → 神経痛
  • myalgia(myo + -algia)— 筋肉の痛み → 筋肉痛
  • arthralgia(arthr + -algia)— 関節の痛み → 関節痛
  • fibromyalgia(fibro + myo + -algia)— 筋肉や結合組織に広がる痛み → 線維筋痛症

-emia — 血液の状態

日本語の「〜血症」にあたります。

  • leukemia(leuk + -emia)— 白血球のがん → 白血病
  • hyperglycemia(hyper + glyc + -emia)— 血液中の糖が多すぎる状態 → 高血糖
  • hypoglycemia(hypo + glyc + -emia)— 血液中の糖が足りない状態 → 低血糖
  • septicemia(septic + -emia)— 感染が血液にのって全身に広がった状態 → 敗血症

path — 病気、苦しみ

  • pathology(path + -ology)— 病気の学問 → 病理学
  • pathogen(path + -gen)— 病気を生み出すもの → 病原体
  • pathogenic(path + gen + -ic)— 病気を引き起こしうる → 病原性の
  • pathogenesis(path + genesis)— 病気の起こりと進み方 → 発症機序(病因)

よく使う接頭辞

接頭辞は用語の意味を微調整します。多いのは、量(多すぎる・少なすぎる)、速さ(速い・遅い)、何かがあるかないか。接頭辞を反対の意味のものに取り替えるだけで、用語全体の意味がひっくり返ります。

hyper — 上に、過度に

  • hypertension(hyper + tens + -ion)— 血圧が高すぎる状態 → 高血圧
  • hyperthyroidism(hyper + thyroid + -ism)— 甲状腺が働きすぎる状態 → 甲状腺機能亢進症
  • hyperglycemia(hyper + glyc + -emia)— 血糖が高すぎる状態 → 高血糖
  • hypertrophy(hyper + trophy)— 組織が過剰に成長すること → 肥大

hypo — 下に、不足して

  • hypotension(hypo + tens + -ion)— 血圧が異常に低い状態 → 低血圧
  • hypothyroidism(hypo + thyroid + -ism)— 甲状腺の働きが弱い状態 → 甲状腺機能低下症
  • hypoglycemia(hypo + glyc + -emia)— 血糖が異常に低い状態 → 低血糖
  • hypodermic(hypo + derm + -ic)— 皮膚の下にある、皮膚の下に注射する → 皮下の

brady — 遅い

  • bradycardia(brady + cardi)— 心拍が異常に遅いこと → 徐脈
  • bradypnea(brady + pnea)— 呼吸が異常に遅いこと → 徐呼吸

tachy — 速い

  • tachycardia(tachy + cardi)— 心拍が異常に速いこと → 頻脈
  • tachypnea(tachy + pnea)— 呼吸が異常に速いこと → 頻呼吸

brady と tachy はセットで覚えるのがおすすめです。日本語でも「徐」と「頻」が対になっているので、英語と日本語を並べておくと両方いっぺんに定着します。

dys — 悪い、困難な、異常な

  • dyspnea(dys + pnea)— 呼吸が苦しい、しにくいこと → 呼吸困難
  • dysphagia(dys + phag)— 飲みこみにくいこと → 嚥下障害
  • dystrophy(dys + trophy)— 組織への栄養がうまくいかないこと → ジストロフィー(栄養障害)
  • dysfunction(dys + function)— 働きがそこなわれている、異常なこと → 機能障害

a / an — 〜がない、欠けている

  • apnea(a + pnea)— 呼吸が一時的に止まること → 無呼吸
  • atrophy(a + trophy)— 栄養が足りずにやせ衰えること → 萎縮
  • aphasia(a + phas)— 話す力・言葉を理解する力を失うこと → 失語症
  • analgesia(an + alges + -ia)— 痛みがない、または痛みをやわらげること → 鎮痛

「読める」から「覚えている」へ

このリストを一度読んだだけでは、語根は記憶に定着しません。効くのは次の2つです。一つは間隔をあけた想起。数日たってから語根に再会し、読み返す前に意味を思い出すこと。もう一つは自分で組み立てること。新しい用語の意味を、パーツから自力で導き出すことです。次に nephrectomy や bradycardia にいきなり出会ったら、すぐに調べないでください。まず分解してみましょう。nephr + ectomy で「腎臓を取り除く」、brady + cardi で「遅い心臓」。この「組み立て直す」ひと手間こそが、語根を記憶に根づかせます。

医療英語ほど、このやり方が報われる分野はありません。パーツの意味がとにかくぶれないからです。-itis はいつでも炎症、hyper- はいつでも過度、-ectomy はいつでも切除。一度覚えたパーツは、何千もの用語にわたって、この先ずっと働きつづけてくれます。

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