hospit
ラテン語 Latin客、主人、よそ者
この語根について
語根 hospit の始まりには、古代のどの民族も迫られた、きわめて重大な判断があります。見知らぬ人が門の前に現れたら、どうするか――という問題です。
印欧祖語の語根 ghos-ti- は、単に「よそ者」という意味でした。しかし、よそ者は分かれ道でもあります。親切にもてなせば、客と主人との友情の絆が生まれます。脅威として扱えば、敵が生まれます。驚いたことに、ラテン語は その両方 の結末を、互いに関連する二つの語に残しました。一つは hospes, hospitis で、これは「客」「主人」「よそ者」を一度に意味します。もてなしという神聖なおきての中では、役割はお互いさまだからです。今日の主人は、明日の客なのです。もう一つは hostis で、敵として見られたよそ者、つまり「敵」を意味します。
まず、迎え入れるほうの枝をたどってみましょう。hospes からは host と hostess(客を迎える人)、hospitality(温かいもてなしそのもの)、hospitable(もてなしのよい)が生まれました。ラテン語の hospitāle「客を迎える場所」は、旅人や巡礼者、貧しい人、病人のための宿泊所を意味していました。何世紀もたつうちに、この何でも受け入れる宿泊所は、目的ごとに意味が狭まっていきます。病人 の世話をする系統は hospital(病院)になりました。死にゆく人のための施設は hospice(ホスピス)になりました。旅人のための簡素な宿は、古フランス語を経由して hostel になりました。そして同じ古フランス語の語が、さらに s を落としてなめらかになったものが hôtel、つまり現代の hotel です。hospital、hostel、hotel は三つ子で、「客の家」を意味する一つのラテン語が三つに分かれたものなのです。
hospitalize は hospital をもとにした現代の動詞(「入院させる」)です。hospitality は、ホテル、レストラン、観光といった、客を迎える仕事からなる一つの産業全体の名前にまでなりました(日本語でも「ホスピタリティ」と言いますね)。
次は、暗いほうの枝です。hostis「敵」からは hostile(「敵の、敵意のある」)と hostility(「敵意、公然の対立」)が生まれました。同じよそ者でも、歓迎ではなく疑いの目で迎えられると、敵へと固まってしまうのです。hostage(人質)もこのあたりに位置します。もともとは保証や担保として引き渡され、相手の陣営に 滞在させられた 人のことでした。敵になるかもしれない人々の中に置かれた「客」であり、まさに hospes と hostis の間にある不安定な場所です。
最後に、guest そのものです。無関係に見えますが、これは hospes のゲルマン語生まれのいとこで、どちらもまったく同じ印欧祖語 ghos-ti- の子孫です。ラテン語が一つの道をたどり、ゲルマン語がもう一つの道をたどりました。そして英語は両方を受け継ぐことになったのです。guest は古ノルド語・ゲルマン語の側から、host はラテン語とフランス語を通って入ってきました。二つの語ですが、古代の一人のよそ者から来ています。
この一族全体は、たった一つの問いを軸に回っています。よそ者を開いた扉で迎えれば、病院、ホテル、もてなしが生まれます。握りこぶしで迎えれば、敵意が生まれます。hospit は、その選択の記憶なのです。
門の前のよそ者は、二つの道に分かれます。迎え入れれば、その人は guest(客)になり、そこに host、hospital、hospitality、hotel、hostel が生まれます。拒めば、その人は敵になり、hostile と hostility が生まれます。同じよそ者に、正反対の扉です。
代表的な単語を詳しく
同じ語根を持つ単語の中から、特に語る価値のある数語を選び、その成り立ちを一つずつひもときます。
hospitalこの一族でいちばん大きく意味が変わった語です。ラテン語の hospitāle は「客の家」で、旅人、巡礼者、貧しい人、病人を分け隔てなく泊める宿泊所でした。何世紀もの間、hospital は単なる慈善の避難所でした(hospitality という語には、今もそのもとの意味が見えます)。やがて意味が、もっとも手厚い世話を必要とする一種類の客、つまり病人に絞られていきました。宿泊所が、治療の場所になったのです。
この一族でいちばん大きく意味が変わった語です。ラテン語の hospitāle は「客の家」で、旅人、巡礼者、貧しい人、病人を分け隔てなく泊める宿泊所でした。何世紀もの間、hospital は単なる慈善の避難所でした(hospitality という語には、今もそのもとの意味が見えます)。やがて意味が、もっとも手厚い世話を必要とする一種類の客、つまり病人に絞られていきました。宿泊所が、治療の場所になったのです。
hospital を見るhotelhotel と hospital は同じラテン語 hospitāle が、旅の途中で二つに分かれたものです。hospital はより直接的に英語に入り、ラテン語の形を保ちました。hotel は古フランス語の hostel を経て、フランス語の hôtel になりました。この曲折アクセント(ô)は、抜け落ちた s の目印です。つまりフランス語の hôtel の小さな帽子は、hostel では今も聞こえる、消えた s の名残そのものなのです。hospital、hostel、hotel――三つの語で、語根は一つです。
hotel と hospital は同じラテン語 hospitāle が、旅の途中で二つに分かれたものです。hospital はより直接的に英語に入り、ラテン語の形を保ちました。hotel は古フランス語の hostel を経て、フランス語の hôtel になりました。この曲折アクセント(ô)は、抜け落ちた s の目印です。つまりフランス語の hôtel の小さな帽子は、hostel では今も聞こえる、消えた s の名残そのものなのです。hospital、hostel、hotel――三つの語で、語根は一つです。
hotel を見るhostilehostile は *もう一方の* 枝、hostis、つまり敵として見られたよそ者から来ています。host の暗い双子です。host が迎え入れるところで、hostile は拒みます。この語は今では軍事(hostile territory=敵地)、企業の世界(a hostile takeover=敵対的買収)、日常の気分(a hostile stare=敵意のこもった視線)にまで使われます。どれも、相手を客ではなく敵として扱うという中心のイメージを保っています。
hostile は *もう一方の* 枝、hostis、つまり敵として見られたよそ者から来ています。host の暗い双子です。host が迎え入れるところで、hostile は拒みます。この語は今では軍事(hostile territory=敵地)、企業の世界(a hostile takeover=敵対的買収)、日常の気分(a hostile stare=敵意のこもった視線)にまで使われます。どれも、相手を客ではなく敵として扱うという中心のイメージを保っています。
hostile を見るhostagehostage は、客と敵の間の不安定な真ん中に位置する語です。もともとは担保や保証として相手の陣営に引き渡され、そこに *滞在させられた* 人のことでした。敵になるかもしれない人々の中に置かれた「客」で、その身の安全は約束が守られるかどうかにかかっています。現代の hostage(人質)は、その考えが暴力的に行き着いた形です。相手を従わせるために捕らえられ、拘束される人です。
hostage は、客と敵の間の不安定な真ん中に位置する語です。もともとは担保や保証として相手の陣営に引き渡され、そこに *滞在させられた* 人のことでした。敵になるかもしれない人々の中に置かれた「客」で、その身の安全は約束が守られるかどうかにかかっています。現代の hostage(人質)は、その考えが暴力的に行き着いた形です。相手を従わせるために捕らえられ、拘束される人です。
hostage を見るguestguest はこのラテン語の一族にとってよそ者のように見えますが、実は host の生き別れの双子です。どちらも同じ印欧祖語 *ghos-ti-*(「よそ者、客」)の子孫です。ラテン語はこの語を host や hospital へと運び、ゲルマン語は guest へと運びました。つまり英語は、同じ古代の語を二つの違う道から二度受け継いだのです。だから語源的に見ると、「host and guest(主人と客)」は、よそ者が自分自身と話しているようなものなのです。
guest はこのラテン語の一族にとってよそ者のように見えますが、実は host の生き別れの双子です。どちらも同じ印欧祖語 *ghos-ti-*(「よそ者、客」)の子孫です。ラテン語はこの語を host や hospital へと運び、ゲルマン語は guest へと運びました。つまり英語は、同じ古代の語を二つの違う道から二度受け継いだのです。だから語源的に見ると、「host and guest(主人と客)」は、よそ者が自分自身と話しているようなものなのです。
guest を見る関連する語根
どちらも「よそ者、客」を扱いますが、xen- はギリシャ語の系統(xenos=よそ者、客)で、xenophobia(外国人嫌い)や xenophile(外国好きの人)を生みました。hospit はラテン語の系統で、hospitable や hospitality を生みました。簡単な見分け方は、専門的な用語や「外国のものへの恐れ」を表す語ならギリシャ語の xen-、日常的な歓迎や宿泊の語ならラテン語の hospit です。
ali(alius「ほかの」)と hospit はどちらも部外者のまわりを回っていますが、見る角度が違います。ali は、何かがよそに属するものであることを示します(alien、alias、alibi)。hospit は、その部外者と結ぶ関係、つまり歓迎(host)か敵意かを示します。alien は立場としてのよそ者、guest や enemy は扱われ方としてのよそ者です。
host は hospit そのものが、フランス語を通ってすり減った形です。ラテン語の hospitem → 古フランス語の hoste → 英語の host。hospit の spit の部分がつぶれて、host という一音節になりました。host、hostess、hostel、hotel を見たら、真ん中を削り取られた hospit を見ているのだと思ってください。