fer
ラテン語 Latin運ぶ、もたらす、生む
この語根について
語根 fer は、ラテン語の ferre「運ぶ、持つ、もたらす」から来ています。ラテン語の中でも特に生産力の高い語根で、ferre はよく使われる接頭辞のほとんどと結びついて動詞を作り、それらが英語にも何十語と入ってきました。
fer を理解するうえでのポイントは、このラテン語の動詞がとても不規則だったことです。主要な3つの形、ferō(私は運ぶ)、tulī(私は運んだ)、lātum(運ばれた、過去分詞)は、それぞれ別々の古い語幹から来ています。英語はこの3つすべてから単語を受け継ぎました。
- ferō から:transfer、refer、prefer、offer、suffer、differ、confer、defer、infer、conference、reference、fertile、fertility、conifer、aquifer、vociferous(いちばん目につく fer のグループです)
- lātum から:translate、relate、dilate、elate、oblation、legislator(lat のグループで、この辞典では別の語根として扱っています)
- tulī から:tolerate、extol(tol のグループ)
現代の英語で「fer」をあちこちで見かけるのは、現在語幹の形が単語づくりでいちばんよく使われたからです。それぞれの単語では、たいてい接頭辞が「どの方向へ、どのように運ぶか」を決めています。
- trans-(向こうへ)+ fer → transfer:向こう側へ運ぶ
- re-(元へ)+ fer → refer:(出どころへ)運び戻す
- pre-(前に)+ fer → prefer:あるものを別のものより前に運ぶ(=好みで先に置く)
- of-(〜へ向かって、ob- の変化形)+ fer → offer:(相手の方へ)運んでいく
- sub-(下に)+ fer → suffer:下から(重荷を)支えて運ぶ
- dis-(離れて)+ fer → differ:別々の方向へ運ぶ
- con-(共に)+ fer → confer:(話し合うために)持ち寄る。「授ける」という意味もあります
- de-(離れて、下へ)+ fer → defer:下へ・遠くへ運ぶ(=延期する)、あるいは自分を低く運ぶ(=相手に従う)
- in-(中へ)+ fer → infer:(証拠から結論を)中へ運び込む
「持つ・生み出す」というイメージからは、-ferous(〜を持つ、〜を産する)という形容詞のグループも生まれました。
coniferous(球果をつける)、aquiferous(水を含む)、vociferous(声を張り上げる)、odoriferous(においを放つ)、saliferous(塩を含む)、auriferous(金を含む)などです。
意外な仲間もいます。fertile(実を結ぶことができる → 肥沃な)、referee(判断をゆだねられる人 → 審判)、referendum(国民に差し戻して判断をあおぐもの → 国民投票)、circumference(円のまわりをぐるりと運ぶこと → 円周)です。
駅で旅行かばんを運ぶポーターを思い浮かべてください。ただし、接頭辞が「どんな運び方か」を教えてくれます。transfer(向こうへ運ぶ)、refer(出どころへ運び戻す)、prefer(片方を先に運ぶ)、offer(相手の方へ運ぶ)、suffer(重荷を下から支えて運ぶ)。接頭辞が方向で、fer はいつでも「運ぶ・持つ」という動作そのものです。
代表的な単語を詳しく
同じ語根を持つ単語の中から、特に語る価値のある数語を選び、その成り立ちを一つずつひもときます。
sufferラテン語の sub-(下に、下から)+ ferre(運ぶ)で「下から支えて運ぶ」、つまり重荷を背負うことです。重い荷物の下で体をかがめている人の姿をイメージしてください。suffer はもともと、何かを負う・耐えること全般を表していました。何かが起こるのを「suffer する(許す)」こともあれば、痛みを「suffer する(耐える)」こともあったのです。現在は「苦痛に耐える、苦しむ」の意味が中心ですが、古い「許す」の意味も *suffer the children to come unto me*(子どもたちが来るのを許しなさい)のような古風な言い回しに残っています。
ラテン語の sub-(下に、下から)+ ferre(運ぶ)で「下から支えて運ぶ」、つまり重荷を背負うことです。重い荷物の下で体をかがめている人の姿をイメージしてください。suffer はもともと、何かを負う・耐えること全般を表していました。何かが起こるのを「suffer する(許す)」こともあれば、痛みを「suffer する(耐える)」こともあったのです。現在は「苦痛に耐える、苦しむ」の意味が中心ですが、古い「許す」の意味も *suffer the children to come unto me*(子どもたちが来るのを許しなさい)のような古風な言い回しに残っています。
suffer を見るofferラテン語の ob-(〜へ向かって、〜に対して)+ ferre(運ぶ)で「〜の方へ運ぶ」です。何かを offer するとき、あなたはそれを相手の方へ運んでいき、相手が受け取れるようにしています。ob- は f の前で of- に変わりました(ob + ferre → offerre)。現代英語での使い方も驚くほど変わっていません。a job offer(仕事のオファー)、a special offer(特別提供)、offer help(手助けを申し出る)――どれも「相手の方へ運ぶ」というイメージを保っています。
ラテン語の ob-(〜へ向かって、〜に対して)+ ferre(運ぶ)で「〜の方へ運ぶ」です。何かを offer するとき、あなたはそれを相手の方へ運んでいき、相手が受け取れるようにしています。ob- は f の前で of- に変わりました(ob + ferre → offerre)。現代英語での使い方も驚くほど変わっていません。a job offer(仕事のオファー)、a special offer(特別提供)、offer help(手助けを申し出る)――どれも「相手の方へ運ぶ」というイメージを保っています。
offer を見るreferラテン語の re-(元へ、再び)+ ferre(運ぶ)で「運び戻す」です。本を refer する(参照する)とき、あなたは注意をその出どころへ運び戻しています。医師が患者を専門医に refer する(紹介する)ときは、患者をよりふさわしい担当者のもとへ「運んで」いるわけです。脚注がある研究を参照させるときも、読者はそこへ運び戻されて内容を確かめます。共通しているのはいつも「出どころへ送り返す」という考え方です。
ラテン語の re-(元へ、再び)+ ferre(運ぶ)で「運び戻す」です。本を refer する(参照する)とき、あなたは注意をその出どころへ運び戻しています。医師が患者を専門医に refer する(紹介する)ときは、患者をよりふさわしい担当者のもとへ「運んで」いるわけです。脚注がある研究を参照させるときも、読者はそこへ運び戻されて内容を確かめます。共通しているのはいつも「出どころへ送り返す」という考え方です。
refer を見るdifferラテン語の dis-(離れて)+ ferre(運ぶ)で「別々に運ぶ」です。違っているものどうしは、互いに「離れる方向へ運ばれて」いて、性質が別々の方向を向いています。同じ語根から difference、different、differential も生まれました。「離れる方向へ運ぶ」というイメージが抽象的な考えをうまく表していることに注目してください。2つのものの性質が別々の方向を指しているとき、それらは differ します。ちょうど別々の道を運ばれていく2人の旅人のようにです。
ラテン語の dis-(離れて)+ ferre(運ぶ)で「別々に運ぶ」です。違っているものどうしは、互いに「離れる方向へ運ばれて」いて、性質が別々の方向を向いています。同じ語根から difference、different、differential も生まれました。「離れる方向へ運ぶ」というイメージが抽象的な考えをうまく表していることに注目してください。2つのものの性質が別々の方向を指しているとき、それらは differ します。ちょうど別々の道を運ばれていく2人の旅人のようにです。
differ を見るfertileferre から来たラテン語 fertilis「生み出すことができる」が元です。fertile は文字どおり「実りをもたらす」という意味で、fertile な土地は作物を実らせ、fertile な女性は子を産み、fertile な頭脳はアイデアを生みます。もとは農業のイメージで、作物のとれる畑、実をつける木を思い浮かべるとよいでしょう。この比喩は知的な創造力(a fertile imagination=豊かな想像力)や、比喩的な「生み出す場」(a fertile ground for innovation=イノベーションを生む土壌)へと自然に広がりました。どの使い方にも「生み出す力がある」という意味が共通しています。
ferre から来たラテン語 fertilis「生み出すことができる」が元です。fertile は文字どおり「実りをもたらす」という意味で、fertile な土地は作物を実らせ、fertile な女性は子を産み、fertile な頭脳はアイデアを生みます。もとは農業のイメージで、作物のとれる畑、実をつける木を思い浮かべるとよいでしょう。この比喩は知的な創造力(a fertile imagination=豊かな想像力)や、比喩的な「生み出す場」(a fertile ground for innovation=イノベーションを生む土壌)へと自然に広がりました。どの使い方にも「生み出す力がある」という意味が共通しています。
fertile を見る関連する語根
lat(latum)は、同じラテン語の動詞 ferre の過去分詞の語幹です。英語ではこの2つの語幹が別々の単語を生みました。現在語幹の *fer* からは transfer、refer、prefer が、過去分詞の *lat* からは translate、relate、dilate が生まれています。どちらも同じラテン語の動詞だと知っていると、translate と transfer がなぜ親戚のように感じられるのかが分かります。
tol(tulī)は、同じラテン語の動詞 ferre の完了形の語幹です。tolerate(文字どおり「耐える、我慢する」)や extol(「持ち上げる → ほめたたえる」)に残っています。fer / lat / tol の3つ組は、ラテン語の中でも特に不規則でありながら、たくさんの単語を生んだ動詞のグループです。
port(portāre)と fer(ferre)はどちらも「運ぶ」という意味ですが、port のほうが物理的・具体的で(import、export、transport のように、品物が場所から場所へ運ばれる)、fer のほうが抽象的です(refer、prefer、infer のように、考えや性質が運ばれる)。見分け方:トラックが運ぶようなものなら port、考えや状態なら fer です。
関連する単語 · 93
different
異なる、違った
offer
申し出る、提供する;申し出、提案;付け値
difference
違い、差異;差
conference
会議、協議会
suffer
苦しむ;(苦痛・損害を)受ける
refer
言及する;参照させる、差し向ける
prefer
〜のほうを好む
reference
言及;参照、参考文献;推薦状
transfer
移す、転勤させる;移動;乗り換え
differ
異なる、違う
preference
好み;優先
differently
違ったふうに、異なって
interfere
干渉する;妨げる、邪魔する
preferred
好ましい、優先の
fertility
生殖能力、繁殖力;肥沃さ;出生率
fertilizer
肥料、化学肥料
differentiate
区別する、見分ける;差別化する
interference
干渉、妨害;(電波の)混信
proliferation
急増、拡散
referendum
国民投票、住民投票
translator
翻訳者、翻訳家;翻訳プログラム
confer
授与する;協議する、相談する
fertile
肥沃な;繁殖力のある;(発想が)豊かな
indifference
無関心、冷淡