ject
ラテン語 Latin投げる
この語根について
語根 ject は、ラテン語の動詞 jacere「投げる」から来ています。その過去分詞は jactum(複合語では jectum)で、英語に受け継がれたのはこの形です。英語ではほとんどの場合、接頭辞のうしろに -ject の形で現れます。
もともとのイメージは、体を使った「投げる」動作でした。ローマ人は槍(jaculum、投げ槍)を投げ、さいころを投げ、船の積み荷を海へ投げ捨てました。しかしラテン語では、この比喩がすぐに広がっていきます。相手に言葉を「投げつける」(非難する)、自分を相手の足もとに「投げ出す」(服従する)、視線を前方へ「投げる」(計画する)、といった具合です。
ject がとりわけ面白いのは、接頭辞との組み合わせ方です。語根の意味は「投げる」でずっと変わらず、接頭辞が「どこへ」「どのように」投げるのかを教えてくれます。
- pro-(前へ)→ project:前へ投げる。計画とは、自分より先の未来へ「投げておく」ものです。プロジェクター(projector)は光を前のスクリーンへ「投げ」ます。
- ob-(向かって、行く手に)→ object:向かって投げる。object はもともと、五感の前に「投げ出されたもの」、つまり目の前に現れる物のことです。動詞の object は、相手の提案に反論を投げつけること、つまり「反対する」ことです。
- sub-(下に)→ subject:下に投げる。subject は権威の「下に投げられた」人、つまり王の臣下です。文法の subject(主語)は動作の「下に置かれた」ものと考えられ、学問の subject(科目)は研究のために目の前に「置かれた」ものです。
- re-(元へ)→ reject:投げ返す。reject は、原稿や申し出、移植された臓器などを、送り手へ投げ返すこと、つまり「拒絶する」ことです。
- in-(中へ)→ inject:中へ投げ入れる。注射器は薬を体の中へ「投げ込み」ます。退屈な会話にユーモアを inject する(持ち込む)ともいえます。
- e-(外へ)→ eject:外へ投げ出す。パイロットはコックピットから緊急脱出(eject)し、用心棒は騒ぎを起こす客をつまみ出します(eject)。
- de-(下へ)→ deject:投げ落とす。dejected(落胆した)とは、気持ちが「下へ投げ落とされた」状態です。
- inter-(間に)→ interject:間に投げ入れる。interject は、人の話の合間に一言を投げ込むこと、つまり「口をはさむ」ことです。
- ad-(〜のほうへ)→ adjacent:近くに投げられた。adjacent なものは、別のものの「そばに投げ置かれて」いて、すぐ隣にあります。
- tra-(横切って、trans- の変化形)→ trajectory:向こうへ投げること。投げられた物が空中に描く道すじ、つまり「軌道」です。
中には、つながりが見えにくくなっている仲間もいます。jet は古フランス語の jeter(投げる)から来ており、さらにさかのぼるとラテン語の jactare(何度も投げる)にたどり着きます。水の jet(噴射)は液体を「投げ出す」ことであり、ジェットエンジンは排気を後ろへ「投げ出して」飛行機を前へ押し進めます。jettison(船を軽くするために積み荷を海へ投げ捨てる)は、この語根のもっとも古く、もっとも文字どおりの意味をいまに残しています。
もう一つ意外な例が conjecture です。ラテン語の con-(一緒に)+ jacere(投げる)で conjectura、文字どおりには手がかりを「一緒に投げ集めること」です。conjecture(推測する)とは、ばらばらの証拠を拾い集め、一か所に投げ集めて一つの推理を組み立てることです。物を同じ山に放り込むという体の動作が、考えを組み立てるという頭の働きに変わったのです。
ject の仲間は、接頭辞のしくみを学ぶ最高のお手本です。中心にあるのが「投げる」だとわかれば、ほとんどの -ject の単語は「どこへ投げたのか?」という一つの問いで読み解くことができます。
誰かがボールを投げる場面を思い浮かべてください。そこに方向を足します。中へ投げれば inject、外へ投げれば eject、前へ投げれば project、元へ投げ返せば reject です。接頭辞が方向を表し、ject はいつでも「投げる」です。
代表的な単語を詳しく
同じ語根を持つ単語の中から、特に語る価値のある数語を選び、その成り立ちを一つずつひもときます。
subjectラテン語の sub-(下に)+ jacere(投げる)で *subjectus*、「下に投げられた」という意味です。王の subject(臣下)は、王の権威の下に投げ置かれた人です。文法の subject(主語)は、述語の動作の下に置かれたものです。科学の実験の subject(被験者)は、観察の下に置かれた人です。どの意味にも共通しているのは「従属」、つまり支配する力の下に置かれているという考え方です。
ラテン語の sub-(下に)+ jacere(投げる)で *subjectus*、「下に投げられた」という意味です。王の subject(臣下)は、王の権威の下に投げ置かれた人です。文法の subject(主語)は、述語の動作の下に置かれたものです。科学の実験の subject(被験者)は、観察の下に置かれた人です。どの意味にも共通しているのは「従属」、つまり支配する力の下に置かれているという考え方です。
subject を見るobjectラテン語の ob-(向かって、行く手に)+ jacere(投げる)で *objectum*、「行く手に投げ出された」という意味です。object とは五感の前に投げ出されたもの、つまりぶつかったり、目にしたり、扱ったりする「物」のことです。法廷で object する(異議を唱える)とは、相手側の行く手に反論を投げ込むことです。名詞は第1音節にアクセント(OB-ject、物)、動詞は第2音節にアクセント(ob-JECT、反対する)が来ます。このアクセントの移動は、受け身の「物」から、能動的な「抵抗」への意味の移り変わりとちょうど重なっています。
ラテン語の ob-(向かって、行く手に)+ jacere(投げる)で *objectum*、「行く手に投げ出された」という意味です。object とは五感の前に投げ出されたもの、つまりぶつかったり、目にしたり、扱ったりする「物」のことです。法廷で object する(異議を唱える)とは、相手側の行く手に反論を投げ込むことです。名詞は第1音節にアクセント(OB-ject、物)、動詞は第2音節にアクセント(ob-JECT、反対する)が来ます。このアクセントの移動は、受け身の「物」から、能動的な「抵抗」への意味の移り変わりとちょうど重なっています。
object を見るprojectラテン語の pro-(前へ)+ jacere(投げる)で *projectum*、「前へ投げられた」という意味です。project は未来へ向かって投げ出されたもの、つまり実行する前に先へ投げておく計画です。projector は光を前へ投げ、projectile(発射物)は文字どおり前へ投げられる物です。建物の一部が外へ project する(突き出る)ときも、その部分が本体の壁より先へ「投げ出されて」いるわけです。名詞は PRO-ject(計画)、動詞は pro-JECT(前へ投げる、予測する)と発音します。
ラテン語の pro-(前へ)+ jacere(投げる)で *projectum*、「前へ投げられた」という意味です。project は未来へ向かって投げ出されたもの、つまり実行する前に先へ投げておく計画です。projector は光を前へ投げ、projectile(発射物)は文字どおり前へ投げられる物です。建物の一部が外へ project する(突き出る)ときも、その部分が本体の壁より先へ「投げ出されて」いるわけです。名詞は PRO-ject(計画)、動詞は pro-JECT(前へ投げる、予測する)と発音します。
project を見るconjectureラテン語の con-(一緒に)+ jacere(投げる)で *conjectura*、「一緒に投げ集めること」という意味です。テーブルの上に散らばった手がかりを、さっと一つの山にかき集める様子を想像してください。それが conjecture(推測)です。断片的な証拠を集め、一か所に投げ集めて推理を組み立てるのです。これはでたらめな当て推量ではなく、不完全な材料から筋道立てて導く推論です。同じ山に放り込んで組み立てるという体の動作を、頭の中で行うことを表した単語なのです。
ラテン語の con-(一緒に)+ jacere(投げる)で *conjectura*、「一緒に投げ集めること」という意味です。テーブルの上に散らばった手がかりを、さっと一つの山にかき集める様子を想像してください。それが conjecture(推測)です。断片的な証拠を集め、一か所に投げ集めて推理を組み立てるのです。これはでたらめな当て推量ではなく、不完全な材料から筋道立てて導く推論です。同じ山に放り込んで組み立てるという体の動作を、頭の中で行うことを表した単語なのです。
conjecture を見るtrajectoryラテン語の trans-(横切って)+ jacere(投げる)が縮まって *trajectus*、「向こうへ投げられた」という意味になりました。trajectory は、投げられた物が空間に描く弧、つまり「軌道」です。この単語は砲術(砲弾の弾道)から天文学(天体の軌道)へ、さらに日常の比喩(career trajectory「キャリアの歩み」、life trajectory「人生の軌跡」)へと広がりました。どの場合も、かつて投げられた何かが後に残した曲線を指しています。
ラテン語の trans-(横切って)+ jacere(投げる)が縮まって *trajectus*、「向こうへ投げられた」という意味になりました。trajectory は、投げられた物が空間に描く弧、つまり「軌道」です。この単語は砲術(砲弾の弾道)から天文学(天体の軌道)へ、さらに日常の比喩(career trajectory「キャリアの歩み」、life trajectory「人生の軌跡」)へと広がりました。どの場合も、かつて投げられた何かが後に残した曲線を指しています。
trajectory を見る関連する語根
どちらも何かを自分から離れたところへ送り出す点は同じですが、ject は勢いのある体の動き、つまり「投げる」です。一方 miss/mit(mittere「送る」から)は、意図してきちんと「送る」ことを表します(submit、transmit、permit)。見分け方:勢いよく飛ばすなら ject、意図して送り出すなら miss/mit です。
ギリシャ語の ballein(投げる)は、ラテン語の jacere にあたる語です。bol は symbol(一緒に投げられたもの)、parable(そばに投げられたもの=たとえ話)、metabolism(変化へ投げ込まれること=代謝)、problem(課題として前へ投げ出されたもの)に現れます。
pel/puls(pellere「押す、駆り立てる」から)は、勢いのある動きという点で ject と重なりますが、pel は一回きりの「投げる」ではなく、押し続ける力を表します。expel(押し出す)と eject(投げ出す)、compel(一緒に押す → 強いる)と compulsion(強制)を比べてみてください。
関連する単語 · 54
project
計画、事業、プロジェクト;映写する;予測する
subject
主題、話題;科目;主語;〜を受けやすい
object
物体;目的、対象;反対する
reject
拒絶する、却下する;不合格品
objective
目標、目的;客観的な
jet
噴出、噴射;ジェット機;ジェット機で行く
objection
反対、異議
projection
突出部;予測;映写、投影
rejection
拒絶、却下;拒絶反応
inject
注射する;注入する、導入する
injection
注射;注射剤
subjective
主観的な
adjacent
隣接した、近隣の
trajectory
軌道、弾道;(発展の)道筋
projector
プロジェクター、映写機
adjective
形容詞;形容詞の
objectivity
客観性、公平さ
eject
追い出す;排出する、取り出す
subjectivity
主観性
objectively
客観的に、公平に
interject
(言葉を)差し挟む、口を挟む
conjecture
推測、憶測;推測する
projectile
発射物、弾丸;発射される
jettison
(積荷を)投げ捨てる;捨てる、放棄する